「釣り人分析学入門」
 「釣りや海に係わるお話を掲載したいと思います。多少脱線してもいいじゃないですか」との言葉につられて、筆のおもむくまま綴ってみた。







▼私が初めて浜福丸を訪れたのは38号船が進水したばかりの頃だったから、かれこれ10年も前のことになる。最近は、いつ訪れても何人かの顔見知りがいるが、最初は心細かったものだ。7時間も1つの船に乗り合わせるのだから、何回か通えば自然と顔見知りになり、お互い声を掛けたり釣りに関する意見交換がはじまる。こうして職業も、詳しい住所も知らない浜福丸に来た時だけの摩訶不思議な交友関係が生まれる。会社勤めをしていると、どうしても仕事上での交友関係に閉塞されがちだから、利害関係の無い交友関係は極めて貴重で楽しいものでもある。

▼浜福丸に通ううちに、お客がいくつかタイプに分けられることが判った。
まず一番目は、釣りといえば浜福丸しか訪れない方々だ。鳥に例えれば「おしどりタイプ」。浜福丸一筋で、決して浮気などしない。このタイプは、数多の船宿を遍歴したが、浜福丸が一番居心地良いという結論に達した人々ではないか。坊主が連続しても、豪快に笑い飛ばし、かえって発奮材料にしてしまう。陸に上がってからの座談会にもマメに参加し、経験から得た貴重なノウハウを惜しげもなく披露する。防舷材(船べりの玉っころ)の着脱も船長に代わってテキパキこなしてしまうし、初心者には懇切丁寧に教えるなど、船宿にとっては経営基盤の安定化と同時にイメージアップに貢献してくれる宝物のような存在だ。

▼2番目のタイプは、季節の釣り物によって船宿を選ぶ方々。鳥に例えれば「燕タイプ」。その季節になると決まって現れる。「やー久しぶり。ご無沙汰」とか何とか言って一人で入ってくるのが特徴。釣り一筋で、仕掛けは自分で作り、市販のものなど見向きもしない。仕掛けや技術を盗むには格好の対象である。しばらく見かけないと思っていると、他店のホームページやスポーツ紙の釣況欄で名前を見つけることがある。竿頭になることに命を賭ける人もいて、とにかく匹数を引き上げてくれるので、船宿にとっては宣伝効果が最も期待できる貴重な存在だ。

▼3番目は、必ず団体で訪れる方々。鳥に例えれば「雀タイプ」。電線にとまるように片舷に大勢で仲良く並んだりする。また、コンビニで大量に食料を買い込んでくることや、出発前から準備に余念がないことも、このタイプに共通するようである。しかし、TV放映や新聞で好調が伝えらた後に現れるため、混んだ船に乗ることが多く、残念ながらオマツリ騒ぎ等で釣果には恵まれないようだ。いずれにしても船宿の経営にとっては無くてはならない存在。

▼釣り人を観察・分析するのは釣行の楽しみのひとつである。岩崎船長によれば「釣り人はよー、みんな俺が一番上手だと思ってんだおぅ。ほんとうだおぅ」とのこと。釣り人分析学の一層の深化を期したい。